好きになっても、いいですか?

「おじさん、掃除ですか?」
「ああ、今はゴミ集めて回ってるんだ。この部屋のゴミで最後!」


ふと、半開きになったドアから外を見る。その足元に、大量のごみ袋が2つ置いてあった。


「こりゃ多いなー、今日は」
「あ、会議が続いて……昼食も出ましたから」
「そうかそうか」


そう言いながら、また大きなゴミ袋がひとつ増えた。
おじさんの手には、それに加えていつも持ち歩いている、ほうきとちりとり。

麻子はちらりと壁にかかった時計を見て、おじさんに手を差し出した。


「ゴミ捨てくらい、出来ますから。おじさん、他にもやることあるでしょう?」
「え?だめだよお嬢ちゃん!そんなこと」
「ついでですから。大丈夫です。それよりも、いつも過ごしやすく綺麗にしていただいてありがとうございます」
「いや、そんな……。お嬢ちゃんみたいなべっぴんさんに言われると、ますます照れちまうな」


頭をぽりぽりと掻きながら、一歩も譲らない麻子に、申し訳なさそうにしてゴミを任せる。そのおじさんは、麻子の好意に甘えて次の作業へと戻って行った。

久々に再会したおじさんを、麻子は微笑みながら見送る。

その麻子の後方に、ひとつの影が――。

「……」


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