好きになっても、いいですか?
「すみません……」
「はい!じゃあ、よろしく」
2対1の格好で話をしているその女子社員は、2名が先輩で1名が新入社員のようだ。
新入社員ということは、当然、麻子の同期ということになる。
そして、麻子はその新入社員の顔を覚えていた。
「“定時”は、全社員平等じゃないんですか?」
麻子は音を立てずに扉を開けて、3人がいる部署に足を踏み入れ、そう言った。
「な……あんた誰よ?!」
「芹沢さん……!?」
「“先輩”なら、このくらいの作業すぐに終わるんじゃないんですか?そもそも、“先輩”なら、就業時間内で片づけなければならないのでは?“後輩”への見本として」
「なっ……部外者は黙りなさいよ!だいたい、これだって新入社員のこの子が時間内にやればよかったことなのよ!」
麻子が、同期の女子社員が手に持っている原稿を見てそういうと、2名の先輩社員は捨て台詞吐き捨て、結局そのまま退社して行ってしまった。