好きになっても、いいですか?
「でも……」
「――お礼は、そこのコーヒーでいいから」
麻子がコピー機を操作しながら、ちらりと目で合図した先。そこにあるのは、喫煙室近くの自動販売機。
矢野はその視線の先を辿って、自動販売機へ駆け寄り、ガコンと音を鳴らすと、それを麻子に差し出した。
「あの……本当にありがとう」
「ううん。むしろ“お詫び”だね」
「お詫び?」
「……明日から、矢野さんを居づらくさせてしまったから」
麻子は、いつも思ったことをすぐに口に出したり、行動してしまったりする。
それは良くもあり、悪くもあること。
特に今回のような、自分以外のことなのに首を突っ込んでしまうというのは後者であろう。
いつもこの繰り返しだ。
自分が正しいと思ったことをする。そして後から悔やむのだ。
「そんなことない。私、芹沢さんから勇気貰えた気がするから。間違っていることには、ノーと言えるように明日から頑張る」