好きになっても、いいですか?

06



「社長、そろそろ切り上げませんか」
「ん」
「社長がこう毎日残業してますと、他の社員が帰社し辛くなりますから」
「……わかってる」


敦志はたまにズバッと物を言う。
それは2人の関係が、社長と秘書以上ということがあるからだろう。

純一は敦志に促されて、手早く目の前の仕事を片づけると、今夜はキーを持っているか再確認して社長室を後にした。


「さて……オレも帰ろうか……」


敦志が最終チェックをして、秘書室と社長室の扉が閉まったかを見ていた時だった。


「すみません、ここのカーペットの清掃入っていいですかね」
「ああ、御苦労さまです。もう残ってるものはいないので、構いませんよ」


敦志がメガネを抑えて、ニコっと清掃員に答えた。


「あ、あなたはもしかして、あの子の上司かい?」
「あの子?」
「あの子だよ。背が高くてべっぴんさんの……そう。この前まで庶務課だった!」

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