好きになっても、いいですか?
席を立ち、自分より背の高い目の前の社長という人物を見上げる。そんな相手にも関わらず、麻子は真っ直ぐと向き合い怯むことなく、目を逸らさない。
「……本当か?」
「社長、本当です!」
そう答えたのは麻子ではなかった。
その声に、2人は振り向くと敦志が軽く息を切らして立っていた。
「最後の一枚はご自分で芹沢さんから回収されていました。わたくしもフロアには何もなかったのを確認しております」
麻子と敦志が目を合わせている中で、純一は麻子を見ていた。
同じ空間にいる泰恵と鈴木は、何事かとハラハラしながら事の行方を見守っている。
「ちっ……。じゃあ一体どこに――」
「とりあえず落ち着いて、一度社長室へ戻りましょう」
「セナはこれから大事な取引があるっていうのに……」
ぶつぶつと純一が漏らしながら麻子に背を向けた時だった。