好きになっても、いいですか?
「ああ、芹沢さんは本当に綺麗だな。すごくそそられる――――」
(もう、ダメだ――)
そう思って、麻子は目をギュッと閉じて歯を食いしばる。
――その時だった。
ガチャッと乱暴にドアの開く音がする。
ノックなしで、扉が開くなんてことは絶対にありえない。
だからこそこのようなことを堂々と出来るのであって、その“絶対”が崩された中川は物凄い勢いで麻子から離れると、ドアの方を見た。
麻子もまた、そのドアの開く音で目を開く。
社長室程ではないが、柔らかなカーペットの上を、静かに歩み寄る黒い革靴からゆっくりと視線を上げる。
「――――早乙女……さん」
「ど、どうして、ここへ……」
麻子も中川も目を丸くして、目の前に現れた敦志を見て声を漏らした。