好きになっても、いいですか?
常務室の扉が閉まり、静かな廊下には麻子と敦志は二人きり。
「――芹沢さんッ」
緊張の糸が切れた麻子は、力が抜けてその場に座り込んでしまう。
そんな麻子の顔を覗きこむように、敦志も姿勢を低くした。
「あ……ありがとう……ございまし、た」
「いえ、本当に申し訳ありません。私の不徳の致すところで」
「――……」
敦志が俯き、悔しそうに謝罪した。
ふと、麻子の顔を見てみると一粒の涙が零れ落ちそうだった。
「あ……や、やっぱりジムじゃなくて護身術とか……そういうのに通ったらいいかもしれませんね」
その瞳のものを零さずに気丈に振舞おうと強がる麻子を、敦志はどうしようもなく、愛おしく思ってしまう。
「―――!!?」