好きになっても、いいですか?


「――――え?」
「……邪魔が入った」
「……本当に秘書課に配属になったり、社長付きになったり、って、運のいい女ね」
「しばらくは、おれも大人しくしてなければ首を切られそうだ」


先程の緊迫した空気とは一転して、静かな空気が流れている常務室で2人はトーンを落として話をしていた。


「惜しいことをしたな」


一人は反省の色が伺えない、中川。


「……もう結構です。他にあたりますから」


不機嫌そうに答えるのは、美月だ。


「――まぁ、そのうちチャンスはくるさ」


中川の腕に捕まりながら、美月の頭の中は“次”のことでいっぱいだった。


(のうのうとしてられるのも今のうちよ、芹沢麻子――――)


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