好きになっても、いいですか?
麻子はシンクに手を広げてつき、目を瞑ると、頭を垂れて長く深い溜め息を吐いた。
そしてその態勢のままゆっくりと目を開ける。
自分の胸元を見るようにして、再び思い出した。
「ああ、ネックレス……どこに落としたんだろう」
力ない声で呟くと、お湯が沸いた音で現実に引き戻される。麻子は火を止めお茶を湯呑に注いだ。
(もしかしたらあの時に……)
「あっ……!」
無意識にまた、昨日のことを思い出していると、急須から注がれたお茶が豪快に湯呑を溢れさせていた。