好きになっても、いいですか?


土曜日。

最近は前にも増して、1週間が早く感じる。

それは麻子が異動して、がむしゃらに働いている証拠でもあった。
庶務課で気を抜いていたわけではないが、やはりトップの人間の傍にいるだけで肩の力は幾分か増して入るだろう。


そんな麻子はアパートにいた。


ぼんやりと窓の外の青空を眺めて、ただ時間が過ぎていく。

麻子の部屋は、20代の女性に似つかわしくない雰囲気であった。


家具家電は必要なものだけを。

テレビも小さなものがひとつだけ。
それも、滅多に麻子はつけることをしない。

自分のものというものも特になくて、あるのは壁に掛けられた2着のスーツ。それと、その横にあるカラーボックスの中に並ぶ本と、必要最小限のコスメだけが並んであるそれだけだ。


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