好きになっても、いいですか?
(お父さんに会いに行こう)
休日はそれが日課だ。
麻子には友人と呼べる人がいなかった。
顔を見れば、お互いに認識して挨拶程度会話する同級生はいるにはいる。
が、大学時代はやはり“家庭の事情”で他の友人と同じような生活は出来ずにいた。
元々ノリも少し合わない部分もあったからか、それは苦痛ではなかった。
しかし、麻子は幸か不幸か整った顔立ちに長身という容姿のために、どうしても周りからは浮いていて目立つ存在だった。
中学高校時代には、そんな麻子へのひがみから中傷を受けることはしょっちゅうだった。
初めこそ戸惑いもしたが、麻子の持ち前の性格から、卑屈になることもなく今のように真っ直ぐと生きてきたのだ。
そしてそれは全て、亡き母の分まで自分を支えてくれた父がいたから――。
「さて、と。もう朝ごはんもとっくに終わったよね」
腕時計を見ると午前9時半。
麻子は自分の朝食の後片付けをしてアパートから出た。