好きになっても、いいですか?
『もしもし。芹沢さんですか?宇野です』
麻子は一瞬、“宇野”とは誰か考えてしまった。
しかしすぐに、秘書課の宇野だと理解すると、今度はなぜ自分の番号を知っていて、一体どんな用件なのかと疑問に思う。
「は……あの?」
『ああ。突然ごめんなさい。やっぱり、せっかくだから今日、もし少しでもお時間があるのならいかがかと思いまして』
「あ……」
今日は、前に敦志が言っていた懇親を兼ねたバーベキューの日だということを思い出す。
『皆さん、芹沢さんに興味があるようで……楽しみにしてらっしゃるみたいでしたから』
「はぁ……」
『あ、芹沢さん。そのままお待ちいただける?』
宇野がそう言うと、暫く外野のわいわいとした音だけが聞こえてきた。
そして、その後聞こえてきた声は、宇野ではなかった。
『……もしもし。芹沢さんですか』