好きになっても、いいですか?

「あら、芹沢さん。もういらしてたの」


その声の先には麗華と美月がいた。
思えば、麗華から電話が来たということを思い出すと疑問が湧いてくる。


「宇野さん……あの、なぜ私の連絡先を?」
「ああ、ちょっと……。なにか不都合でした?同じ秘書課なんですもの。何かありましたら連絡とれるようにしておきませんと」


そう言われると返す言葉もない麻子は、口を噤んで黙って麗華を見る。


沈黙していると、脇の方からパシャパシャと水音が聞こえてくる。

こんな夏の暑い日には、風情があって且つ、涼しげに感じられる音。
麻子が敦志と下った坂の上には木々が生えていて、その木蔭からひんやりと涼しい空気も流れてくる。

そして今みんなが立っている場所には、ゴツゴツとした大きめの砂利。

今年の懇親会バーべキュー会場は、都内の河川敷で行われていた。


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