好きになっても、いいですか?
ジャリッジャリッ、と音を鳴らしながら、動かない麻子の元に麗華が近づいてくる。
そんな様子を、そのままの位置から見ていたのは美月。
その近くには、ほかに誰もいなく3人だけだ。
そのときの麻子は手に汗を握って、緊張状態になっていた。
なるべく何も考えないで、目の前の麗華と、その歩く音だけに集中するように――。
麗華がにっこりと麻子の前で止まると、意味深な一言を投げかけた。
「……知っているのは連絡先だけじゃないわよ?」
少しずつ、聞かないようにしているはずの音が麻子の耳に迫る。
それと相乗して動悸が再び始まる。
「芹沢さん。あなたの“過去”を――…···」
(ああ、やっぱりダメだよ。お父さん――――)