好きになっても、いいですか?
(芹沢麻子という女は、あの時、俺の差し出そうとした金を拒否した。
一度じゃない。二度も、三度も。
普段にしてもそうだ。
決して贅沢はしていないようだし、そんな欲望も感じられない。
感じるのは、父親への家族愛と責任感。
俺の瞳に映るアイツは、腹が立つほど強く――――そして、弱い……。
あの真っ直ぐな瞳は、誰かを裏切るなんて知り得ない瞳。
その瞳があの日、確かに揺らいで……。
今にも消えてしまいそうだった)
「――――くそっ……」