好きになっても、いいですか?
異変が起きたのは翌日のこと。
「おはようございます」
いつもと同じように、笑顔で全員に聞こえる声で麻子は挨拶をした。
だが、いつもと違うのは、その挨拶の返事が誰からもすぐに返ってこないということ。
「?泰恵さん?」
「あ、麻子ちゃん……」
不思議に思って、一番近くの泰恵に問うように声を掛ける。
泰恵の顔はおろおろとした表情で、何事かと麻子は首を捻った。
「……課長?」
泰恵が珍しくいつまでも口を開かないので、次はいつもなら優しく挨拶を返してくれるはずの鈴木に顔を向けた。
「あ、おはよう……。芹沢くん、あの……」
よく見ると、鈴木の額は汗をかいていて、しきりにハンカチで顔を拭っていた。
(余程まずいことが起きたの?)
そう思った麻子は、痺れを切らして切り出した。