好きになっても、いいですか?
「ごめん、芹沢さん行こう」
スッと敦志が麻子の荷物を持って坂を登る。
(――あ。言葉が違う。敬語が抜けてるんだ)
麻子は敦志の違いに気が付くと、その場に立ったまま敦志を見上げていた。
そんな敦志は、振り向いて麻子が付いてきていないことに気が付くと再び麻子の元へと戻ってくる。
「やっぱり、まだ調子悪い?オレが運ぼうか――」
「そっ!そんな、大丈夫です!!一人で歩けます!」
敦志は本気で言っていた。
麻子もそれがわかったから全力で断った。
「じゃあ、ゆっくり行こう」
差し出された手を、麻子は躊躇いながら握った。