好きになっても、いいですか?
「だけど――――」
キッ、と車を止めたと同時に、敦志がメガネを外した。
そして麻子を見つめる。
「……?」
麻子はその遮るものがなくなった敦志の視線を逸らすこともできずに、戸惑った顔で見つめ返すだけ。
メガネを外した敦志は、純一と同じように綺麗な顔立ちで、やはり純一と似た雰囲気を持っていた。
だから余計に麻子は、純一とのあのキスを思い出してしまって警戒する。
「あっ、あの、青に……」
麻子が信号を指さして言うと、慌てる様子もなく敦志は再びメガネを掛けて車を発進させた。
「なにか、言い掛けましたよね……?」
「……いや、なんでもない」
結局、敦志の『だけど』の続きを聞くことは出来ずに、麻子はアパートへと送ってもらっただけだった。