好きになっても、いいですか?
今、目の前にいる敦志はいつもと同じ敦志。
皺のないスーツに身を纏って、ネクタイも曲がることなくキッチリ締めて。
メガネを掛けて優しい口調で問いかけるのはなんら変わらない――昨日の彼が嘘のよう。
「だ、大丈夫です!し、仕事しますね」
麻子は昨日の敦志を思い出して、よそよそしく敦志から離れてデスクに向かおうとした。
「!!?」
背を向けた瞬間、グイッと手を掴まれた麻子は、心臓が飛び出そうなくらい驚く。
「絶対に、無理はしないで。何かあったらオレに言って」
見上げた男の人は、オフィスでは初めて見る、昨日の敦志だった。