好きになっても、いいですか?
ゴクリ、と唾を飲むと、麻子は恐る恐る鈴木に問い掛けた。
「いつから、どこの部署ですか」
そしてまた少しの沈黙のあと、信じがたい異動先を聞く。
「今日付けで、異動部署は――――秘書課です」
「ひ……!!?」
これでもかと、麻子の大きな目を更に大きくして、長い睫毛は動くこともしなかった。
ずっと麻子の腕を掴んでいた泰恵が話し出す。
「きっと、麻子ちゃんのこと“買って”のことよ。仕事も早いし、何より社長の横に立っていて、様になるもの!」
「社長?」
「社長直々の話みたいよ!」
(あの社長が、直々に?!)
目眩をおこしそうになった。
別にずっとここに居られるとは思ってなかった。だけど、突然の命令はあまりに横柄で素直に聞き入れたくない感情が溢れでるのは仕方がなかった。