好きになっても、いいですか?
「さすがに宇野は、相川美月と違って下劣なことはしないと思ってはいますが……」
「いえ、特になにも。大丈夫ですから」
「本当に?」
心から心配をしてくれているのがわかる。
それほど、敦志の眼差しは真っ直ぐと温かい。
だから麻子も心をこめて言う。
「はい。ありがとうございます」
その時の敦志に向ける麻子の笑顔は、敦志を動揺させる。
仕事は仕事。彼女は今は部下。しかし、心がそれについていけなくなるような笑顔を向けられたのだ。
そして、その笑顔にとりつかれたのがもう一人――。
「おい。休みは終わりだ。早くそれを纏めてくれ」
明らかに不機嫌な声色の純一が、そのもう一人の存在だった。