好きになっても、いいですか?
『あら、純一くん。いらっしゃい』
夜になると敦志の母が帰宅して、純一を笑顔で迎える。
『―――敦志の母さんは、いいな』
それは、多分純一がいつも思っていたことで。
しかし、口に出したのはこの時の1回だけだった。
『純一くんの口に合うかわからないけど、お夕飯食べていく?……姉さんには、私から言っておくから』
『敦志の母さんのご飯が一番美味しい』
純一はお世辞を言わない。
本心でいつもそう答えて、敦志の母を喜ばせていた。
『庶民の味だけどね!栄養は満点よ』
にこやかにそういう敦志の母は、確かに敦志の自慢の母でもあった。