好きになっても、いいですか?
純一の父である藤堂が、そのことを知らされたのは、もうあと2カ月後に産まれるという頃。
母体にも影響が出やすい。簡単に堕ろすことも不可能。
加えて彼女は、脅迫まがいに藤堂に迫る。
“私に手出ししたら、警察とマスコミに。責任を取らない場合も、世間に隠し子の存在を知らしめる”、と。
さらには、藤堂の妻は既に他界していることも、子どもが未だに居ないことも初めから知っていたうえで、その女はこうなるように仕組んだ。
『性別は――男の子よ』
それはダメ押しの一言。
藤堂の当時の年齢はすでに40半ば―――。
他界した妻は、子供が出来る体ではなかった。
後妻も考えたが、妻を愛していた為に仕事に明け暮れ、歳だけとっていった。
少し過去のこととして整理が付き始めた心に、その女は入り込んだのだ。
巧みな言葉と、信用させる態度で。