好きになっても、いいですか?

『ねぇお母さん。ぼく、弟か妹ほしい』


敦志には兄弟がいなかった。

物心ついたときには、父がいなかったから。


それでも幼かった敦志はなにもわからず、ただ、まわりの子達をみて、“自分も兄弟がほしい”と思った。


その要求があまりにも続いたので、敦志の母は苦し紛れに敦志に言う。


『敦志。兄弟は……無理なんだけどね……従兄弟なら……いるのよ』

『いとこって、なに?』

『近い親戚……兄弟みたいなものよ』


その言葉に、敦志は飛び上がって喜んだ。

それから今度は、その“弟”に逢いたくて、母を困らせたのは言うまでもない。

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