好きになっても、いいですか?
『あはははっ!』
しかし、凄む純一の前で、すぐに千紗は高らかに声を上げて笑った。
『――これだからおぼっちゃんは!今更そんな顔をして怒っても、所詮、私の芝居に騙されてたじゃない』
『やめろ!』
今度は敦志が声を上げて止めようとした。
『ふん!金じゃなきゃ、だれがあんたみたいなガキ、面倒見るって言うの?お母さんの代わりをしてあげてたんだから、その見返りを求めてもいいじゃない』
(――――最悪だ)
敦志はどうしようもなく落胆する。
純一は、確かにまだまだ子どもの部分がある年齢だ。
それゆえに、こんな女にうまく手懐けられた。
(もっと、早くオレが助言していたりさえすれば――)
敦志は自分の手を、グッと握りしめる。
きっと、もう、純一は立ち直れない。
たった2度の、
けれど生涯消えない傷を負わされたのだ。
こんな汚い2人の女のせいで―――。