好きになっても、いいですか?
敦志は柄にもなく、就業時間中だと言うのに仕事以外のことに思考を奪われる。
昨日何かあったのは歴然としている。
それは今、目の前にいる麻子と純一を見れば容易にわかる。
(オレはどうしたいんだ……。
純一くんを取るのか、自分を取るのか)
あれほどまでに純一に恩を感じ、同情心もあり、彼を変えてくれそうだ、と麻子の父に頭を下げた。
純一が、麻子を女性として愛する可能性はゼロではなかった。
それは頭の片隅にあったはずなのに。
しかし、もう一方でそんなことは奇跡に近い、出逢い方も最悪だった二人だ。
おそらく、限りなくゼロに近い。
勝手にそう思っていたのだ。
だけど、現実にはそのゼロはゼロではなかった。
(こんなに苦しい思いは……いつまでもつか……自信がない)