好きになっても、いいですか?
「本日は、システムジャパンに打ち合わせを兼ねて、会談の予定が入ってますから」
敦志が手帳に視線を落とし、純一に報告する。
それはすぐに移動しなければならない時間の約束で、2人はバタバタと外出の準備を始めていた。
「芹沢さん、資料を纏めてありますか?」
「え?あ、はい」
未だ全てを覚えてはいない麻子は、さらっとしかその頼まれた資料の内容を見ていなかった。それでも、とりあえずは言われたとおりにした。
その分厚いファイルを持とうとすると、敦志が自然に手を出してそれを取った。
「これは私が持ちますから」
「あ、でも……」
今まで、常に優しかった敦志。
だからそれは、特に珍しいことではない気遣いだった。
けれどそんな場面を見た純一は、その2人に割り込むかのようにして言う。
「もたもたしてないで、車を手配しろ」