好きになっても、いいですか?
「!!」
「……っ!!」
一瞬の出来事だった。
運転手も何もできずに、ただ一部始終を見届けていただけ。
そして、はっと我に返ったその運転手が声を掛けた。
「だ、大丈夫ですか?」
目の前のマンホールに視線を向けると、ヒールが穴にハマっているパンプス。
それは足を取られて転びそうになった麻子のものだ。
運転手の佐々木が、次に麻子の心配をして顔をあげると、ほっと胸を撫で下ろす。
麻子の左右で、純一と敦志が腕を掴み、支えられている図があった。
「芹沢さん、大丈夫ですか」
「……ったく、何してる!」
「も、申し訳ありません……」
二人の手に助けられた麻子は立って、一言謝罪の言葉を口にする。そして、一人で立つと、ハマった片方のパンプスへと駆け寄った。