好きになっても、いいですか?
「……っ」
見事なまでにハマった、そのパンプス。
それは、非力な麻子には到底取れそうもなかった。
「どけ」
そういって、麻子の前に手を伸ばして大きな手がパンプスを掴む。
あれだけ麻子が両手に力を込め、体重を掛けたのが嘘のように、その手は難なくパンプスを救出した。
「早くしろ」
マンホールを避けて、そのパンプスをそっと麻子の前に置くと、すぐに背を向けて車に乗り込んだのは純一だった。
「す、すみません」
麻子は顔を赤くしながら俯いて、敦志の後に続くように車に乗り込む。
「……」
そして、敦志はただただ、純一のこの何気ない行動に驚いていた。