好きになっても、いいですか?

その純一の行動を、不思議に思ったのは麻子だけではなかった。


「いやぁ。わざわざあの息子にすみませんねぇ」
「いえ。また直接挨拶にはきますが、一応お先に名前だけでも覚えていただこうかと」


何事もなかったように、会話をしている純一を、違和感を感じながら敦志は見ていた。

純一が、名刺を切らすような初歩的ミスをする人間ではないことを知っている。

――では、なぜ?

その明確な理由はわからないが、麻子に何か関係しているのか、と首を捻った。


もしも、車に名刺を取りにいくのなら、自分でも問題なかったはず。

たまたまかもしれない。
しかし、やはりなにかのわけがあって、必然だったのかもしれない。


わざわざ麻子を指名して、車に行かせた理由――。


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