好きになっても、いいですか?
「――“秘密”?」
しかし、敦志は用心深い性格だ。
簡単に麗華のいうことを信じるなんてことはしない。
話半分で聞こうと心に言い聞かせて、麗華の続きを待つ。
「はい。彼女が、誰にも言わずにいることです」
「それは一体、なんです?」
敦志はわざと間髪いれずに問う。
麗華はそれに乗せられて、完全に敦志が食いついた、と思って流暢に話し出す。
「彼女――。芹沢さんは、トラウマがあるようなんです」
「トラ……ウマ……?」
「ええ。なんでも、幼少期に川で怖い思いをしたようで――以来、水場はまともにいられないとか」
(水が……?だから、あの河原で倒れたっていうのか?
だとしたら、もしかしてさっきの浄水場のモニターも――――)
敦志は麗華のいうことが、あながち嘘でもなさそうだ、と口元に手を添える。