好きになっても、いいですか?

ここまで予想外の行動をする人間は今までにいただろうか。
それも、ついこの間まで学生だったひとりの小娘だ。


「可愛げのない……」
「でしたら、可愛げのある方に異動をお願いされたらどうでしょう。失礼します」


背中の中ほどで揺れる、ストレートの髪をくるりと回った反動で大きく靡かせる。そして麻子は、つかつかとドアに向かい、一礼して退室してしまった。

その行方を、最後まで見ていた敦志が呆れたように純一に言う。


「……素直に仰ればよかったのに」


それを聞いた純一は、麻子が去ったドアから視線を戻すと、ドカッと椅子に背中を預ける。そして、明らかに苛立ちながら敦志に言う。


「何様のつもりだ!」
「……どうします?そのまま辞職させますか?」


デスクの上のIDカードを手に取り、写真を見て純一が言った言葉は――。







「―――いや、考えがある」


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