好きになっても、いいですか?

「普段は微塵も見せませんが、あの強さの裏に、かなり弱い部分があるかと……」
「……なるほど。で、宇野さんは、なぜそんなことをご存じで?」


敦志の鋭い切り返しに、麗華は言葉を一瞬詰まらせて視線を落としてしまう。

しかし、キレ者で必要とされている節もある秘書・宇野麗華は、すぐに形勢を立て直して敦志に向き合い、こう言った。


「――たまたま、相川さんの友人が芹沢さんを知る方と繋がっていらしたようで。
そして、これも失礼を承知で言わせて頂きますが……早乙女様は、芹沢さんを女性として見ておられるかと思いまして」


麗華のいうことは、明らかにとってつけたようないい訳だ、と感じた。
にも関わらず、敦志は、自分の麻子への気持ちが見透かされていることに、さすがにすぐには上手く対応できなかった。


「彼女がそんな風に傷つき、繊細な精神であるなら――早乙女様のような方が、お近くに居て差し上げたら……と思ったんです」


今回麗華は、それが言いたかっただけ。


距離を縮めていそうな純一と、麻子を引き離せるよう、敦志に“麻子を守ってやっては――”と。


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