好きになっても、いいですか?
「ああ、余計なお世話か」
「……父から聞いて、ご存じなんですよね?」
麻子は純一ではなく、どこか焦点の合わない目でそう呟いた。
「今後も同じようなことが起こるかも知れません。今の内に、私以外の人を――」
「そのつもりは、ない」
(あの2度の過ちを3度、4度と繰り返す前に、私を引き離して――)
麻子はその思いで純一に意見するが、当然却下される。
「お前は優秀だ。それでいて、俺のトラウマをも関係なくさせる」
「……トラウマ……」
その単語は自分の中にあるものにも当てはまるだろう。
薄々は気付く点があった。
そして、麻子は自分と同じものを、まさか目の前の人間にも秘めているだなんて、と興味をひいていたのも事実。