好きになっても、いいですか?
「恐らく、もう気が付いてるんじゃないか?俺が極度の女性嫌いだ、と」
「……」
麻子は何も声には出さなかったが、その雰囲気がイエスと言っているようなものだった。
純一はそれがわかると、ふっと小さく笑う。
「俺がガキだったと言えばそれまでだ。高校生の時だ。……家庭教師の女に、裏切られた」
純一は大きな椅子の背に体を預け、肘かけに手を乗せると、再び頬杖をつきながら淡々と話を続ける。
「あの頃はまだ観察力がなかった。今のように。でも、その観察力がそれなりになった今、周りにいる女を見れば、金目当てか、見た目と肩書目当て。どいつもこいつも……反吐が出る」
苦虫を噛み潰したように顔を歪めると、もう片方の手を握りしめて肘かけを抑え気味に叩きつける。
「……そんな奴らを見ては思い出す――――自分の母親を」
「――母親……」
その言葉も、麻子にとっては特別なもの。