好きになっても、いいですか?
「俺は、母親だなんて、一度たりとも思ったことはないけどな」
その言葉は、今までのどの時よりも抑揚がなく、冷淡。
表情も無表情で、さっき麻子を見つめたような光の灯った瞳ではなかった。
「最低な女。金と、自分の欲望の為だけに俺を産んで……捨てた――――」
麻子は何も言えなかった。
簡単に同情することも、関係ない、と聞き流すことも出来なくて。
「でも、俺は紛れもなく、その“最低な女”の子どもなんだよなぁ……」
純一は、自らの手のひらを虚ろな瞳で見つめてぽつりと漏らす。
そして、再び力の限り握り拳を作って奥歯を噛みしめながら、苦しそうに吐き出した。
「そんな自分に、無性に虫唾が走って気が狂いそうになる――――」
さすがに思いつめたような純一を目の当たりにして、麻子が初めて動く。