好きになっても、いいですか?
「――――貴方は、汚れていない」
純一の元に歩み寄った麻子は、自ら握りしめていた純一の手に、そっと自分の手を重ねた。
次第に、純一のその拳は力が緩んで行く。
そして麻子は、純一の手のひらの爪の跡を見つめて黙った。
「……自分でも、何でこんな話を君に――と思う」
「……」
「笑うか?――――まぁ、君の事情だけを知るのも心苦しいから、ということにしておくか」
純一が麻子に手を掴まれたまま、自嘲気味にそう言った。
「笑いません」
だけど麻子は、終始真剣な面持ちで純一と向き合う。
「貴方が私を――私の過去を笑わないように。私も貴方を笑う理由がありません」
そうして次は、自然と麻子も自分の話を語り始める。