好きになっても、いいですか?

「ほらっ、麻子!危ないからそっちはダメっていったでしょ!」


麻子にすると、母はいつも小言がうるさかった。

今思えば普通のことだったのに、当時の麻子はそれが鬱陶しくて仕方がなかった。

こどもだったのだ。


しかし、そんないい訳通用しない、と大人になった麻子は自分を責め続ける。

あの時の自分の罪は――――と。



「おかあさん、おこってばっかり」
「麻子が怒らせるようなことばかりするからよ」
「……おとうさーん……あれ、ねてる」
「疲れてるのよ。少し寝かせてあげましょう」


ごつごつとした岩場の上には芝生と木々。

そこに敷物をひいて、父はのんびりと寝転がっていた。

そんな父に口を尖らせた麻子は、そこにただいるだなんてつまらなくて、一人敷物を飛び出した。

< 288 / 445 >

この作品をシェア

pagetop