好きになっても、いいですか?
「ほらっ、麻子!危ないからそっちはダメっていったでしょ!」
麻子にすると、母はいつも小言がうるさかった。
今思えば普通のことだったのに、当時の麻子はそれが鬱陶しくて仕方がなかった。
こどもだったのだ。
しかし、そんないい訳通用しない、と大人になった麻子は自分を責め続ける。
あの時の自分の罪は――――と。
「おかあさん、おこってばっかり」
「麻子が怒らせるようなことばかりするからよ」
「……おとうさーん……あれ、ねてる」
「疲れてるのよ。少し寝かせてあげましょう」
ごつごつとした岩場の上には芝生と木々。
そこに敷物をひいて、父はのんびりと寝転がっていた。
そんな父に口を尖らせた麻子は、そこにただいるだなんてつまらなくて、一人敷物を飛び出した。