好きになっても、いいですか?
03
社長室を出た麻子は、エレベーターを待っていた。
(IDカードもないし、庶務課にも戻れないか……)
思い切った行動をしてしまうのは、昔から麻子の悪い癖でもある。
しかし、切り替えの速さも持ち合わせている麻子は、急遽オフになった時間を有効に使おうと思い立った。
一度更衣室へ戻り、着替えを済ませて荷物を手に取る。
わずか3カ月と少しだったが、泰恵の顔を思い出して少し淋しそうに微笑んだ。
そして、手帳のメモ用紙に一言と、ロッカーのカギを泰恵のロッカーの前に置いた。
麻子はその足で、広いエントランスを抜けて外に出る。
そしてそのままタクシーを捕まえると乗り込んだ。