好きになっても、いいですか?
「麻子ー?」
丁度そんなことを考えているときに、当の本人、母の声が聞こえてきた。
麻子は咄嗟に、身を生い茂る草に身を隠した。
――ちょっと驚かせよう。
本当にそれだけだった。
まるでかくれんぼをしているかのように、麻子は無邪気に息を潜める。母がまた自分の名を呼び、過ぎ去って行くのを黙って見ていた。
そのとき、いたずらな風が、麻子の麦わら帽子を上へ上へ、と飛ばして行った。
「あ!」
くるくると面白いくらいに飛んでいく自分の帽子。
取りに行かなきゃ!と、自然にそう思ってその場を立った時に、その帽子が母を飛び越えて川まで行ってしまったのを呆然と眺めてた。