好きになっても、いいですか?
「――だから、私は」
「その罪を背負っている、と?」
純一に言葉を先に取られた麻子は、ゆっくりと俯いて口を開く。
「だから、私は母の分も、そのときのきょうだいの分も、何倍も努力して生きようって決めました。
私の幸せを、父は願っているって知ってます。母もそれを望んでいると言ってくれます。
だけど、私にはどうしても、そんなふうに考えることなんて出来ない」
そう。だから麻子は、ただ必死に、なるべく前を向いて生きるように頑張ってきた。
本当はいつでもあの日を振り返ってしまいそうだったけれど、それがせめてもの償いだと信じて。
それ以外に迷うことなんて何もなかった。
彼と会うまでは――。
心で呟いて純一を見上げた時に、ふわりと首元に手を回された。