好きになっても、いいですか?

ドクン、と脈打つ心臓に、麻子の想像とは違った行動を純一は取った。


また、抱きしめられてしまったら――そんなことを思っていたが、純一はそうはしなかった。


「じゃあ、これはちゃんと、君の元に戻るようになっているんだな」


純一の言葉に目を見開いて、首元にひんやりとした感触を感じた麻子は、そこに視線を落とす。


「――――これっ……」
「チェーンが切れていたから、それを直してた。だから返すのに時間がかかった」


それは紛れもなく、母の形見のネックレス。


母を忘れないように、自分の罪を忘れないように……。


「だって、人を殺したんですもの。もしそうだとしたら、きっと、それを忘れるな、っていうことで私の所に戻ってくるんです」


つまむように赤い石を手にして、麻子はぽつりと呟いた。
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