好きになっても、いいですか?

「それで、満足されるんですよね?」


麻子は力を入れていた手を緩めて方向転換すると、麗華を見ることなくそのまま資料室を後にした。


麻子が退室しても、麗華はあまりに予想外だった麻子の反応に、その場に立ち尽くす。


「……お金が必要だとわかっていたから、てっきり――……」


てっきり、“秘書”という立場を守って、もう一方の条件を飲むものだと思い込んでいた。


麗華は逆に、その方が良かった。


下手に純一の心に何かを残して去るよりは、身近な敦志とどうにかなってくれた方が、随分と自分の気持ちにも余裕ができると思った。


あとは、婚約者の存在。
どうせただ決められただけの存在ならば、心はまだ奪えるという可能性を感じていた。


なのに――。


「……どうにかしないと――」


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