好きになっても、いいですか?

足早に資料室から遠ざかる麻子は、複雑な想いを抱いていた。


皮肉にも――麗華によって、より鮮明になった自分の心。


元々責任感はある麻子。
何もなくとも自分が原因で誰かが、会社が危うくなるのなら同じ選択を選んでいただろう。

だけど、今の麻子の理由はそれだけではなかった。

その理由こそが、麻子を苦しめている。


(自分の気持ちに我慢は出来ても、嘘はつけない)


真っ直ぐな性格の麻子は、どこまでも真っ直ぐで。


(いっそ辞めた方が会社にも、社長にも、自分にも……いい)


相手には決められた人がいる。

そんな人をこれ以上想って――――


――これ以上、罪を重ねないように。


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