好きになっても、いいですか?
(あぁ、もう帰ろう)
麻子は逃げるように会社を出た。
外はまだほんのり明るくて、少しだけ気持ちが明るくなった気がした。
気付けば麻子はお昼を食べ損ねていた。
手には開けていないお弁当。
保冷バックに入れていた保冷剤が功を奏して、弁当はまだ大丈夫そうだった。
麻子は少し先にある木々に囲まれた公園でベンチに座ると、弁当を一口、口に運んだ。
「美味しそうですね」
不意に聞こえてきたその声は、甘い香りと共に麻子の横へと近づいた。
「ご自分で作られたのですか?」
その人物を確認すると、麻子は手にしていた箸を落としそうになってしまった。