好きになっても、いいですか?

「――――し、城崎、様……」
「あ。あなた、純一さんの」


お互いにお弁当から視線を上げて顔を合わすと、見たことのある顔に二人とも驚いた。


麻子に声を掛けたのは、偶然にもあの、城崎雪乃だ。


「こんな時間にお弁当って、お昼休みは頂けませんでしたの?」
「いえ……あの、そういうわけでは」


本心から、休みが取れなかったのか、と心配そうな表情を向ける雪乃に麻子は動揺した。
そんな麻子の気持ちなど知る由もない雪乃は、にこにこと麻子の横に腰を下ろした。


「でも、本当に美味しそう。私は全然上手くできなくて」
「城崎様が、お弁当を……?」
「ええ。少し……練習してるんですけど。あ。そんな“様”だなんて呼び方やめてください。“雪乃”でいいですから」
「――雪乃、さん……」


屈託のない笑顔の雪乃は、夕方だと言うのに朝陽のように眩しく見えた。


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