好きになっても、いいですか?

「どうしたらそういうふうに作れるようになるのかしら……」


ほぅっ、と付く溜め息までもが可愛らしい。

麻子はそんな雪乃の姿を見て、ますます罪悪の念にかられてしまう。


「毎日作っていれば、誰でもこれくらいすぐに出来るようになりますよ」
「本当?!」
「……はい。あきらめちゃ、ダメですよ」


“あきらめちゃ、ダメ”。


人には平気でそういうことを言っていて、自分はどうなのだろう。

その言葉はお弁当だけではなく、何にしても当てはまるはずなのに。


仕事、家庭、趣味、勉強、人間関係……恋愛――――。



麻子は今まで前を向いて歩いてきたからこそ、今、初めて何かから逃げようとする自分に混乱する。



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