好きになっても、いいですか?
「そうですよね。あきらめたらダメですよね。うん、もう少し頑張ってみよう」
ふわりと雪乃の髪が風に靡いて、再び甘い香りが麻子の鼻をくすぐった。
そして雪乃はすっと立つと、くるりと麻子の方へ向いて聞く。
「突然ごめんなさい。あなたのお名前は――?」
「芹沢です。芹沢麻子」
「もしかして、同じくらいの歳かしら」
「22ですけど……」
「わぁ!一緒だわ!なんだか親近感が沸くわね。麻子ちゃんって呼んでいい?」
(純粋無垢とは、彼女みたいな人のことを言うんだ――)
麻子は可憐に振舞う雪乃をみて、改めて思った。
「……構いませんけど……でも、会社では――」
「ありがと!」
麻子の話を途中で被せて嬉しそうにそういうと、雪乃は「また」と言って去ってしまった。