好きになっても、いいですか?
受話器を置いて、すぐに社長室の扉が音をあげた。
いつもなら、誰かがこの社長室に入室する際には敦志がいてキーを解錠する役目を果たす。だが、今は突然の来訪、そして純一も敢えて一人きりで対応をした。
「失礼いたします、藤堂社長――」
「用件を、早くしろ」
扉の近くで立ったまま、純一が話を急かした相手は――宇野麗華。
麗華は憧れの純一が間近にいることに頬を紅潮させながら、少し遠慮がちに目を伏せて緊張気味に口を開いた。
「あ、あの、お時間を取らせてしまいまして申し訳ございません」
「いいから、早く用件を」
「あ……はい。私、芹沢さんから預かっていたものを――」
「預かった?」
その名は先程内線にて聞いていた。
だからこそ、5分と言う時間と、用件を、と急かしていたのだ。
でなければ、この純一が、仕事中に麗華に時間を割くはずがない。