好きになっても、いいですか?
「一体何を――……!」
純一がその預かり物の正体がわからなくて、苛立ち気味に尋ねようとした。
そのときに麗華が手にしていたものが目に入り、一瞬止まった。
「それは、何だ」
「ですから、芹沢さんから預かっていました。コレを」
「俺はなにも聞いていない」
決してその差し出されたものを、純一は受け取ろうとはせずに反論した。
「私は、“辞める”と伺いましたが」
麗華の手にしているもの。
それは麻子が書いた、という“辞表”だった。
勿論それは偽物で、麗華が仕込んだもの。
しかし昨日の麻子の口からは辞めるという意志を確認済みだと、麗華は物怖じせずにそれを純一に突き付けた。